TECHNOLOGY

Far-UVC LED

Far-UVC LEDについて

LEDは、電子の持つエネルギーを直接、光に変換する半導体素子です。 LEDは小型・軽量、高効率、長寿命などの特長を有しており、様々な分野において、従来光源との置き換えが進められております。

紫外光は、可視光線より波長が短い人間の目には見えない光です。この紫外光は、波長ごとにUVA、UVB、UVCと呼び分けられており、それぞれ優れた応用を有しております。

特に、波長が200 - 280 nmのUVCは、オゾン層によって完全に吸収されるため、通常、地上には存在しない特殊な光となっております。この特殊な光は、生物のDNAに損傷を与えることにより、優れた殺菌効果を示します。UVCは、薬剤の残留や薬剤耐性菌の出現などの薬剤使用に伴うリスクのないクリーンな殺菌・浄水を可能とします。 また、当社グループは、紫外光照射による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化メカニズムについて研究を行い、コロナウイルスの不活化はウイルスRNAの損傷が原因であることを世界で初めて明らかにしました[1]

Far-UVCは、UVCの中でも、さらに波長の短い200 - 230 nmの特殊な光を指します。Far-UVCは、優れた殺菌効果を有すると同時に、人体に対する安全性が高いことも報告されている極めて有用性の高い光です。

Far-UVCの特性

従来利用されてきた紫外線UVCは、生体に対する危険性が高いことから、無人環境での使用が前提でした。一方、Far-UVCは、人体に対する安全性が高く[2][3]、有人環境における利用についても実証が進められています。

一般に、波長の短い光ほど物質に吸収されやすく、物質の内部に入り込む長さが短くなります[4]。タンパク質に吸収されやすいFar-UVCは、死細胞から成る角質層で吸収されるため、生きている細胞に到達しません。そのため、人体に影響を及ぼすことなく、表面殺菌を可能にする新たな技術として大きな注目を集めております。
人体においては、角質層が強固な物理的バリアとして機能しています。 人間以外の生物もそれぞれ生体防御のためのバリア層を備えています。例えば、植物はクチクラと呼ばれる非細胞性の脂質膜を、魚類は体表面に粘液を分泌することで粘液層を構築しています。 波長の短いFar-UVCは、これらのバリア層における吸収が大きいため、生体内部への光の侵入が小さくなります。

そのため、従来のUVCと比較して、生体に対する高い安全性が期待されています。ミクロな細菌・ウイルスに対する殺菌・不活化効果と、マクロな生体に対する安全性を兼ね備えるFar-UVCは、様々な分野における活用が期待されています。Far-UVCは、有人環境における殺菌、農作物や養殖魚の病気の予防、アレルゲンの不活化など、生態系にまつわる諸問題に対し、クリーンな解決策を提供できる大きな可能性を秘めています。
参考文献
[1] 紫外線照射による新型コロナウイルス不活化のメカニズム
[2] “Long-term Effects of 222-nm ultraviolet radiation C Sterilizing Lamps on Mice Susceptible to Ultraviolet Radiation”, Photochemistry and Photobiology, 2020, 96 853
[3] “Exploratory clinical trial on the safety and bactericidal effect of 222-nm ultraviolet C irradiation in healthy humans”, PLoS ONE 15(8): e0235948 (2020).

世界トップクラスの結晶成長技術

理化学研究所は、技術的難度の高いFar-UVC領域において、世界に先駆けて1 mWの光出力を達成しました[1]。

発光波長の短波長化に伴い、LEDの効率が指数関数的に低下することが知られています[2]。 特に、波長が230 nm以下のFar-UVC領域における効率は低く、実用化に求められる1 mWクラスの光出力の達成は極めて困難な課題でした。 当社は、世界に先駆けて1 mWの光出力を達成した理化学研究所のFar-UVC LEDに関する技術の社会実装を通じて、新しい光によるクリーンなソリューションの提供を目指しております。

[1] “Milliwatt-power far-UVC AlGaN LEDs on sapphire substrates”, Appl. Phys. Lett. 120, 211105 (2022)

[2] External Quantum Efficiency of UV-LEDs (2022)